賃貸不動産経営管理士は、宅建級に伸びるのか。

この問いは、なかなか面白いと思っています。

宅建ほど有名になるかと言われると、正直そこまでは簡単ではありません。

宅建は強すぎます。

不動産資格といえば宅建。
不動産業界に入るなら宅建。
求人でも宅建。
資格手当でも宅建。
世間の知名度でも宅建。

数字を見ても、宅建が不動産資格の中心にあるのは間違いありません。

では、賃貸不動産経営管理士はダメなのか。

私は、そうは思いません。

むしろ、これからの日本では、賃貸不動産経営管理士のような「管理に関わる資格」は、じわじわ効いてくる可能性があります。

宅建は、不動産取引の資格です。

売る。
買う。
借りる。
貸す。
重要事項説明をする。

不動産の入口に強い資格です。

一方で、賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の管理に寄った資格です。

契約して終わりではなく、貸した後、住み始めた後、退去するとき、その後の原状回復まで関わる世界です。

地味です。

でも、これからの日本では、この地味な部分がかなり重くなると思っています。

宅建級になるかは別として、管理の資格として伸びる可能性はある

賃貸不動産経営管理士を、宅建の下位互換みたいに見るのは違うと思っています。

宅建は取引の資格です。

賃貸不動産経営管理士は管理の資格です。

見ている場所が違います。

不動産は、契約して終わりではありません。

入居者がいます。
家賃があります。
設備故障があります。
退去があります。
原状回復があります。
近隣トラブルがあります。
高齢者の入居もあります。
オーナーが高齢化することもあります。
相続で、急に物件を持つ人も出てきます。

不動産は、買った後、貸した後、住み始めた後の方が長いです。

だから、取引だけではなく管理が大事になります。

ここに、賃貸不動産経営管理士の意味があります。

宅建のように派手ではありません。

名前だけで世間が驚く資格でもありません。

でも、管理の時代に合っている資格だと思います。

宅建は取引の資格、賃貸不動産経営管理士は管理の資格

宅建と賃貸不動産経営管理士は、似ているようで役割が違います。

宅建は、不動産取引の入口にある資格です。

売買や賃貸借の契約。
重要事項説明。
宅建業法。
権利関係。
法令上の制限。

不動産会社で働くなら、まず宅建と言われるのは自然です。

一方で、賃貸不動産経営管理士は、契約後の管理に目を向ける資格です。

建物や設備の維持管理。
家賃や敷金などの金銭管理。
入居者対応。
退去時の原状回復。
オーナーへの説明。
管理受託契約。
契約更新や解約。
苦情対応。

かなり地味です。

でも、実際の賃貸住宅では、この地味な部分こそ大事です。

部屋を貸すというのは、契約書を作って終わりではありません。

人が住みます。

生活があります。

設備が壊れることもあります。

家賃の問題もあります。

退去のときには原状回復もあります。

近隣トラブルもあります。

高齢者の入居や、相続でオーナーが変わることもあります。

こう考えると、不動産は「取引」だけでは見えません。

貸した後、住み始めた後、建物を維持していく時間の方がずっと長いです。

ここに、賃貸不動産経営管理士の価値があります。

賃貸住宅管理業法で、資格の見え方が変わった

日本で資格が強いのは、資格名がかっこいいからではありません。

制度に結びつくからです。

法律に結びつく。
登録に結びつく。
配置に結びつく。
求人に結びつく。
手当に結びつく。
会社の中での評価に結びつく。

ここに乗った資格は、やっぱり強いです。

宅建が強いのも、ただ有名だからではありません。

宅建業という制度があり、宅建士の設置があり、重要事項説明があり、不動産会社が必要とするから強いわけです。

賃貸不動産経営管理士も、昔とは見え方が変わりました。

賃貸住宅管理業法によって、管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理業者は登録が必要になっています。

また、営業所や事務所ごとに、賃貸住宅管理の知識・経験等を持つ業務管理者を1名以上置く必要があります。

ここが大きいです。

もちろん、賃貸不動産経営管理士がないと絶対に業務管理者になれない、という話ではありません。

宅建士に指定講習というルートもあります。

ここを無視して「賃貸不動産経営管理士がないとダメ」と煽るのは違います。

ただ、賃貸不動産経営管理士が、賃貸住宅管理業法や業務管理者制度と関係する資格になったのは事実です。

昔のように「宅建のついでに取る資格」とだけ見るのは、もう少し古い見方だと思います。

制度に乗った資格になった。

この意味は軽くありません。

空き家が増える時代に、管理は軽くならない

これからの日本では、空き家が増えます。

総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査では、空き家数は900万戸、空き家率は13.8%で、どちらも過去最高となっています。

ただし、ここで勘違いしてはいけません。

空き家が増えるから、すぐに賃貸管理の仕事が爆発的に増える、という単純な話ではないです。

貸せない空き家は、やっぱり貸せません。

立地が悪い。
建物が古い。
修繕費が高い。
所有者が動かない。
相続関係が複雑。
そもそも需要がない。

こういう空き家は、資格を持っていても簡単に収益物件にはなりません。

現実はそこまで甘くありません。

ただ、空き家が増える社会では、不動産を「持っているだけ」で済まなくなります。

貸すのか。
売るのか。
壊すのか。
修繕するのか。
管理会社に任せるのか。
遠方オーナーの物件を誰が見るのか。
高齢者に貸すなら、どんな備えが必要なのか。

こういう判断が増えていきます。

人口が増えていた時代なら、不動産は持っているだけで何とかなった面もあったかもしれません。

でも、人口減少と空き家の時代は違います。

放っておくと傷みます。

入居者がいないと収益は出ません。

管理が悪いとトラブルになります。

高齢オーナーだけでは対応できないことも増えます。

ここで必要になるのは、きれいごとの知識ではありません。

現実の管理です。

賃貸不動産経営管理士が扱う分野は、この現実にかなり近いところにあります。

高齢化で、賃貸管理はさらに難しくなる

空き家だけではありません。

高齢化も、賃貸管理に大きく関わります。

国土交通省は、単身世帯の増加や持ち家率の低下などを背景に、高齢者、低額所得者、障害者などの住宅確保要配慮者の賃貸住宅への居住ニーズが高まると説明しています。

一方で、賃貸人側には、孤独死、死亡時の残置物処理、家賃滞納などへの懸念があるともされています。

これは、かなり現実的な話です。

「高齢者にも部屋を貸しましょう」と言うのは簡単です。

でも、貸す側には不安があります。

孤独死が起きたらどうするのか。
残置物は誰が片付けるのか。
保証人がいない場合はどうするのか。
家賃滞納が起きたらどうするのか。
福祉や行政とどうつなぐのか。

これからの賃貸管理は、鍵を渡して、家賃を回収して終わりではありません。

生活に近づきます。

法律にも近づきます。

福祉にも近づきます。

相続や終活にも近づきます。

だから、賃貸管理の知識を持つ人の価値は下がりにくいと思っています。

むしろ、現場は重くなる。

ここに、賃貸不動産経営管理士の将来性があります。

AI時代でも、制度に乗った資格は簡単には消えない

AIの進化はすごいです。

正直、普通のホワイトカラーはかなり危ないと思っています。

文章を書く。
調べる。
まとめる。
比較する。
メールを作る。
説明文を作る。

こういう仕事は、どんどんAIでできるようになります。

不動産業界も同じです。

物件紹介文もAIで作れます。

管理報告書もAIで整えられます。

オーナー向けの説明文も、入居者向けの案内文も、AIでかなり作れます。

では、人間はいらなくなるのか。

私は、そうは思いません。

最後に確認するのは人間です。

責任を持つのも人間です。

制度を理解して、現場で判断するのも人間です。

AIがどれだけ便利になっても、法律に関わる仕事、登録に関わる仕事、配置に関わる仕事、管理責任に関わる仕事は、簡単には消えません。

むしろ、AI時代になるほど、制度を理解している人と、何も知らずにAIへ聞くだけの人の差が出ると思っています。

資格の勉強をしている人は、AIの答えをそのまま信じるのではなく、自分の知識で確認できます。

ここが大きいです。

AI時代に資格はいらないのではなく、AI時代だからこそ、資格で土台を作る意味がある。

賃貸不動産経営管理士も同じです。

AIが賃貸管理の説明文を作る時代になっても、管理受託契約、原状回復、金銭管理、入居者対応、建物設備、オーナー対応の土台を持っている人と、まったく知らない人では、見えるものが違います。

資格は、AIを使うための土台にもなります。

試験としても、軽く見る資格ではない

賃貸不動産経営管理士は、試験としても簡単に見すぎない方がいいです。

令和7年度の賃貸不動産経営管理士試験は、受験者31,792名、合格者9,370名、合格率29.5%でした。

合否判定基準は、50問中38問以上正解です。

合格率だけを見ると、宅建より高いです。

でも、50問中38問以上というのは、かなり高得点です。

「3割近く受かるなら楽勝」と見る資格ではありません。

しかも、受験者には宅建経験者や不動産業界の人もいます。

不動産にまったく触れていない人が、軽い気持ちで受けて簡単に受かる資格というより、宅建や不動産資格の知識とつなげて取りに行く資格だと思います。

私自身も、宅建と賃貸不動産経営管理士を同じ年に受けました。

賃貸不動産経営管理士だけを単独で見たというより、宅建、マンション管理士、管理業務主任者の勉強がかなり効いた感覚があります。

不動産資格は、別々に見えてつながっています。

民法。
借地借家法。
区分所有法。
建物や設備。
賃貸借契約。
原状回復。
管理の考え方。

それぞれの資格で見ている場所は違いますが、不動産という大きな世界の中ではつながっています。

だから、宅建の次に賃貸不動産経営管理士を取る流れはかなり自然です。

宅建で取引を学ぶ。

賃貸不動産経営管理士で管理を見る。

この流れは、かなり相性がいいと思います。

それでも、宅建級になるとは簡単に言わない

ここは冷静に見ます。

賃貸不動産経営管理士が、宅建級の知名度になるか。

私は、そこまではまだ言い切れません。

宅建は、不動産業界の入口資格として完成されています。

受験者数も多い。

求人でも見かける。

資格手当にもなりやすい。

不動産に興味がない人でも、名前くらいは聞いたことがあります。

この位置まで、賃貸不動産経営管理士がすぐに行くとは思いません。

また、賃貸不動産経営管理士を取っただけで、いきなり転職が決まるとか、収入が大きく上がるとか、そういう言い方も危ないです。

資格で一発逆転はありません。

ただ、不動産業界で働いている人、賃貸管理会社にいる人、宅建の次を考えている人、空き家や相続物件に関心がある人には、かなり相性がいい資格です。

盛らなくても、この資格には十分に書く価値があります。

賃貸不動産経営管理士は「管理の時代」の資格になる

私は、賃貸不動産経営管理士は、宅建と同じ方向で伸びる資格ではないと思っています。

宅建は取引の中心です。

賃貸不動産経営管理士は管理の資格です。

だから、見るべきなのは「宅建と同じ知名度になるか」だけではありません。

これからの日本で、管理をわかっている人の価値が上がるか。

制度に乗った賃貸管理資格の存在感が増すか。

そこを見るべきです。

空き家が増える。
高齢者が増える。
単身世帯が増える。
建物は古くなる。
オーナーも高齢化する。
相続で物件を持つ人も増える。
入居者対応は難しくなる。

この流れの中で、賃貸管理は軽くなりません。

むしろ重くなります。

だから、賃貸不動産経営管理士は「管理の時代」に合う資格だと思います。

派手ではありません。

でも、現実に近い。

ここが強いです。

まとめ

賃貸不動産経営管理士が宅建級に伸びるか。

宅建と同じ知名度、同じ受験者数、同じ求人価値になるかと言われれば、まだそこまでは言い切れません。

宅建は不動産資格の中でも別格です。

ただ、賃貸不動産経営管理士に将来性がないかと言えば、それは違います。

賃貸住宅管理業法の中で、業務管理者制度と関係する資格になった。

空き家は増えている。

高齢者の賃貸入居も大きな課題になっている。

原状回復、家賃管理、建物管理、入居者対応、オーナー対応など、賃貸管理の現場はこれからさらに重くなる。

AI時代になっても、制度に乗った資格は簡単には消えません。

むしろ、AIを使う時代だからこそ、制度を理解している人の価値は上がります。

資格で一発逆転とは言いません。

でも、日本で生きる以上、制度に乗った資格はやっぱり強いです。

宅建が取引の資格なら、賃貸不動産経営管理士は管理の資格。

宅建級になるかどうかだけで見るより、これからの日本で「管理をわかっている人」の価値が上がるかどうか。

私は、そこに賃貸不動産経営管理士の将来性があると思っています。

参考情報

不動産適正取引推進機構

賃貸不動産経営管理士協議会

国土交通省

総務省統計局