社会保険労務士と行政書士はAI時代にも必要か|外国人労働者230万人・空き家900万戸から考える
AIで書類作成は変わる。
これはもう避けられない。
申請書の下書き。
就業規則のたたき台。
契約書の文案。
相談内容の整理。
法令情報の要約。
メール文や説明資料の作成。
こういう作業は、AIでかなり速くなる。
だから、「社労士や行政書士の仕事はなくなるのではないか」と考える人が出てくるのは自然だ。
ただ、その見方は浅い。
士業の仕事は、書類作成だけから生まれているわけではない。
もっと現実的なところから発生している。
厚生労働省によると、令和6年10月末時点の外国人労働者数は2,302,587人。外国人を雇用する事業所数は342,087所。どちらも過去最多だ。
さらに、外国人労働者の在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が718,812人で、届出義務化以降初めて最多になっている。
空き家も増えている。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査では、空き家数は900万2千戸。空き家率は13.8%。どちらも過去最高だ。
この数字を見ると、話はかなり変わる。
外国人労働者が230万人いる。
外国人を雇う事業所が34万所ある。
専門的・技術的分野の外国人労働者が70万人を超えている。
空き家が900万戸を超えている。
これらは、ただの統計ではない。
社労士と行政書士の仕事が発生する場所そのものだ。
外国人を雇えば、労働条件、社会保険、雇用保険、労災、就業規則、職場管理の問題が出る。
外国人が日本で働くなら、在留資格、更新、変更、雇用契約、職務内容、会社の事業内容の確認が必要になる。
空き家が増えれば、相続、不動産、管理、売却、解体、活用、行政手続きの問題が出る。
AIが書類を作れるようになっても、こうした現実問題は消えない。
だから、AI時代に社労士と行政書士を見るなら、「AIで書類が作れるから終わり」と考えるのは違う。
見るべきなのは、書類ではない。
仕事が発生する場所だ。
AIで変わるのは作業。消えないのは現実問題
AIで効率化される仕事は多い。
これは社労士も行政書士も同じだ。
社労士なら、就業規則の下書き、労務相談の論点整理、法改正情報の要約、社内説明文の作成はAIで速くなる。
行政書士なら、許認可申請書類の下書き、契約書の文案、内容証明の案、在留資格申請の説明文、必要書類の整理はAIで速くなる。
ここだけ見ると、士業の仕事が減るように見える。
でも、AIで速くなるのは主に作業部分だ。
会社が人を雇う現実は消えない。
外国人が日本で働く現実も消えない。
高齢化で相続が増える現実も消えない。
空き家が増える現実も消えない。
許認可が必要な事業も消えない。
つまり、問題そのものは残る。
AIが変えるのは、その処理方法だ。
だから危ないのは、資格そのものではない。
危ないのは、作業だけの人だ。
書類を埋めるだけ。
ネットで調べた内容をまとめるだけ。
依頼者から聞いた情報をそのまま転記するだけ。
制度判断をしない。
リスク説明をしない。
個別事情を整理しない。
こういう仕事は、AIに置き換えられやすい。
逆に、残りやすいのは次の仕事だ。
制度を読む。
事実関係を整理する。
要件に当てはめる。
リスクを説明する。
会社や依頼者の事情を聞く。
どの手続きが必要か判断する。
AIが出した答えを確認する。
ここに資格の価値が残る。
AI時代に強いのは、資格名を持っているだけの人ではない。
資格で得た知識を使って、現実の問題を判断できる人だ。
社労士は、外国人雇用の増加と無関係ではない
外国人労働者230万人という数字は、行政書士だけの話ではない。
社労士にもかなり関係する。
外国人を雇えば、会社側には労務管理が発生する。
労働条件。
労働時間。
残業。
休日。
賃金。
雇用保険。
健康保険。
厚生年金。
労災。
安全衛生。
就業規則。
退職。
ハラスメント。
職場内の説明。
外国人労働者だから、労働法や社会保険の対象外になるわけではない。
むしろ、言語、文化、雇用契約、在留資格、職務内容が絡むため、管理は難しくなる。
厚生労働省は、外国人の雇入れ・離職時に、氏名、在留資格、在留期間などを確認し、厚生労働大臣へ届け出ることを事業主に義務付けている。
この時点で、外国人雇用は単なる採用の話ではない。
労務管理の話でもある。
外国人を雇う事業所が34万所を超えているということは、それだけ多くの会社で外国人雇用に関する労務管理が発生しているということだ。
社会保険はどうするのか。
雇用保険はどうするのか。
労災が起きたらどうするのか。
雇用契約書の内容は適切か。
就業規則を説明できているか。
退職時の手続きはどうするのか。
在留資格と職務内容にズレはないか。
こういう問題は、AIに文章を書かせるだけでは終わらない。
会社の実態を見て、制度に当てはめて、リスクを整理する必要がある。
ここに社労士の仕事がある。
行政書士は、在留資格と外国人雇用の増加に関係する
外国人労働者が230万人を超えたという数字は、行政書士にも直結する。
外国人が日本で働くには、在留資格が関係する。
在留資格の更新。
在留資格の変更。
技術・人文知識・国際業務。
技能実習。
特定技能。
家族滞在。
永住。
帰化。
もちろん、すべてを行政書士だけが扱うわけではない。
ただ、在留資格や各種申請の分野は、行政書士が関わりやすい領域だ。
特に重要なのは、「外国人が増えている」だけではないことだ。
専門的・技術的分野の在留資格が718,812人で最多になっている。
これは、日本で働く外国人の中身が変わってきているということでもある。
単純労働だけの話ではない。
専門職、技術職、国際業務、企業の人材不足、外国人採用。
こういう話とつながってくる。
ここで行政書士に求められるのは、申請書をきれいに作ることだけではない。
本人の経歴。
学歴。
職務内容。
雇用契約。
会社の事業内容。
報酬。
在留状況。
過去の申請歴。
家族関係。
こういう情報を整理して、制度に当てはめることだ。
AIで申請文の下書きはできる。
でも、事実関係が間違っていれば意味がない。
要件を満たしていなければ通らない。
職務内容と在留資格がズレていれば問題になる。
だから、行政書士の国際業務は、AI時代にも残りやすい分野だと思う。
AIで作業は速くなる。
でも、判断と整理は残る。
空き家900万戸は、行政手続きの問題でもある
空き家900万2千戸という数字も重い。
空き家は、ただ家が余っているという話ではない。
相続。
所有者不明。
遺産分割。
売却。
解体。
管理。
活用。
農地。
建物の老朽化。
近隣トラブル。
自治体の手続き。
こういう問題が絡む。
空き家問題は、行政書士だけで解決するものではない。
司法書士、税理士、宅建業者、土地家屋調査士、不動産会社、自治体、解体業者など、いろいろな専門家が関わる。
それでも、行政書士が関われる場面はある。
相続関係の書類。
遺産分割協議書。
各種届出。
許認可。
空き家活用に関係する事業手続き。
農地や用途変更に関係する行政手続き。
契約書や内容証明。
AIで文章は作れる。
でも、そもそも何の手続きが必要なのか。
誰が相続人なのか。
どの専門家につなぐべきなのか。
行政に何を確認すべきなのか。
空き家を使うのか、売るのか、壊すのか。
こういう判断は、書類作成だけではない。
だから、行政書士の仕事は「書類を書く人」では弱い。
社会の手続きが複雑な場所に入り、依頼者の状況を整理する資格と考えた方がいい。
社労士は「会社の中の問題」に強い
社労士の強さは、会社の中に問題が発生し続けることにある。
会社が人を雇う限り、労務管理はなくならない。
入社。
退職。
社会保険。
雇用保険。
労災。
育休。
介護休業。
休職。
復職。
有給休暇。
残業時間。
就業規則。
ハラスメント。
メンタル不調。
高齢者雇用。
外国人雇用。
これらは、AIが進んでも消えない。
むしろ、働き方が複雑になるほど、労務管理は難しくなる。
昔のように、全員が同じ場所で、同じ時間に、同じ働き方をする時代ではない。
短時間勤務がある。
副業がある。
育児や介護との両立がある。
高齢者雇用がある。
外国人雇用がある。
メンタル不調がある。
休職と復職がある。
この状況で、会社は制度を運用しなければいけない。
AIは法令情報を出せる。
でも、会社ごとの事情までは勝手に判断できない。
過去の運用。
本人の事情。
証拠。
社内規程。
上司の対応。
会社のリスク。
他の社員への影響。
こういうものを整理して、現実的な対応に落とす必要がある。
ここに社労士の価値がある。
行政書士は「社会の手続き」に強い
行政書士の強さは、社会に手続きがある限り仕事が発生することにある。
日本は手続きの国だ。
事業を始めるにも手続きがある。
許認可が必要な業種がある。
外国人が日本で働くには在留資格が関係する。
相続では書類が必要になる。
空き家を動かすにも、所有者、相続、売却、活用、行政との接点が出る。
契約書や内容証明が必要になる場面もある。
AIで書類作成が楽になっても、制度そのものが消えるわけではない。
むしろ、手続きが複雑なままオンライン化されると、分かる人と分からない人の差は残る。
行政書士は、ここで役割を作れる資格だ。
ただし、「行政書士です」だけでは弱い。
建設業許可に強いのか。
在留資格に強いのか。
相続に強いのか。
不動産関係に強いのか。
飲食店や店舗開業に強いのか。
契約書や内容証明に強いのか。
分野を決める必要がある。
行政書士は業務範囲が広い。
だからこそ、自分の経験や関心と組み合わせた方が強い。
AI時代に資格を取る意味は、AIに勝つことではない
AI時代に資格を取る意味は、AIに勝つことではない。
AIを使う側に回ることだ。
何も知らない人がAIを使うと、AIの答えが正しいかどうか分からない。
それっぽい文章を見て、納得してしまう。
でも、制度を勉強している人なら違う。
その説明はおかしい。
その条文の理解はズレている。
その手続きだけでは足りない。
その事実関係なら別の確認が必要。
そこは専門家につなぐべき。
こういう判断ができる。
だから、資格の勉強はAI時代に意味がある。
特に日本では、資格は強い。
登録がある。
独占業務がある。
名称がある。
試験がある。
制度がある。
求人や配置、手当につながることもある。
もちろん、資格を取れば人生が自動的に変わるわけではない。
でも、資格を取ると、社会の見え方が変わる。
会社の制度が分かる。
行政手続きが分かる。
法律や制度の文章に慣れる。
AIが出した答えを確認できるようになる。
これはかなり大きい。
会社員こそ、金融投資だけでなく自己投資も必要になる
S&P500や全世界株式に投資するのは大事だ。
金融投資はやった方がいい。
ただ、金融投資だけでAI時代を乗り切れるわけではない。
株を買っても、自分の仕事の知識が増えるわけではない。
AIでホワイトカラーの作業が変わるなら、自分の知識に投資する必要がある。
その一つが資格だ。
社労士を勉強すれば、会社と働く人の制度が分かる。
行政書士を勉強すれば、許認可や手続き、法律の考え方が分かる。
どちらも簡単な資格ではない。
でも、だからこそ価値がある。
AI時代に必要なのは、ただ作業する人ではない。
AIを使いながら、制度を読み、現実の問題を整理できる人だ。
資格は、そのための自己投資になる。
まとめ
社会保険労務士と行政書士は、AI時代にも必要性が残る資格だ。
ただし、「国家資格だから安泰」という話ではない。
AIで書類作成は変わる。
作業だけの仕事は厳しくなる。
でも、仕事が発生する現実は消えない。
外国人労働者は230万人を超えている。
外国人を雇う事業所は34万所を超えている。
専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人労働者は70万人を超えている。
空き家は900万戸を超えている。
この数字を見ると、社労士と行政書士の仕事が発生する場所は、今の日本にかなり多い。
社労士は、会社の中の問題に強い。
労働条件、社会保険、雇用保険、労災、就業規則、外国人雇用、休職、退職、労務相談。
会社が人を雇う限り、こうした問題はなくならない。
行政書士は、社会の手続きに強い。
在留資格、許認可、相続、空き家、契約書、内容証明、事業手続き。
日本に手続きがある限り、仕事が発生する場所は残る。
AI時代に危ないのは、資格そのものではない。
作業だけの人だ。
逆に、制度を読み、事実を整理し、リスクを説明し、AIの答えを確認できる人は強くなる。
だから、社会保険労務士と行政書士は、AI時代にも考える価値がある。
資格はゴールではない。
でも、AI時代に自分を守り、仕事の見え方を変える自己投資としては、かなり強い。
参考サイト
・厚生労働省
・総務省統計局
・出入国在留管理庁
・行政書士試験研究センター
・社会保険労務士試験オフィシャルサイト
