はじめに

行政書士は、よく「独立開業を目指せる資格」として紹介されます。

たしかに、それは間違いではありません。

行政書士は、会社員をしながら目指す人も多いですし、受験資格もありません。士業(専門資格を活かして仕事をする職業)の中では、比較的チャレンジしやすい資格として紹介されることもあります。

ただ、ここで一つ大事なことがあります。

行政書士は、試験に合格したからといって、すぐに仕事ができる資格ではないと思います。

むしろ、行政書士は実務の方が難しい資格です。

そして、ここがかなり大事なのですが、行政書士は「法律を勉強したい人」よりも、すでに得意分野がある人が、その分野を仕事に変えるために取ると強い資格だと思います。

行政書士は、資格だけで戦うには少し難しい

行政書士は、扱える業務の幅がかなり広い資格です。

建設業許可(建設業を営むために必要な許可)、在留資格(外国人が日本に滞在するための資格)、風営許可(風俗営業などに必要な許可)、産業廃棄物処理業許可、飲食店営業許可、相続、遺言、会社設立、契約書作成など、分野はかなり多いです。

一見すると、幅広く仕事ができるので魅力的に見えます。

ただ、逆に言えば、何でもできそうに見えるぶん、何を専門にするか決めないと迷いやすい資格でもあります。

行政書士試験に合格したあとに、

「さて、何を仕事にしようか」

と考える状態だと、正直かなり大変だと思います。

行政書士の仕事は、ただ申請書の空欄を埋めるだけではありません。

お客様の状況を聞き取り、要件に合っているか確認し、必要書類をそろえ、役所とやり取りし、場合によっては図面や現場の状況まで見ていく必要があります。

つまり、行政書士は「資格を取ればすぐに仕事になる」というより、自分の得意分野や経験と組み合わせて初めて強みが出やすい資格だと思います。

建設業を知っている人は、行政書士とかなり相性がいい

行政書士の代表的な業務の一つに、建設業許可があります。

建設業許可は、建設業を営む会社や個人事業主に関係する手続きです。

この分野は、建設業界で働いたことがある人とはかなり相性がいいと思います。

なぜなら、建設業許可は、法律の知識だけではなく、建設業界の流れや現場感も関係してくるからです。

たとえば、元請け・下請けの関係、工事経歴、専任技術者(一定の資格や実務経験を持つ技術者)、経営業務の管理責任者、社会保険、決算書、更新や変更届など、見るべきものが多いです。

建設業界をまったく知らない人が、いきなり本だけ読んで取り組むには、なかなか重い分野だと思います。

でも、建設業界で働いていた人なら、話が変わります。

現場の流れがわかる。
会社がどんな書類で困るかもわかる。
許可や更新がどれだけ大事かも肌感覚でわかる。

こういう人が行政書士資格を取ると、単なる法律知識ではなく、実務に近い強みになります。

行政書士は、建設業界の経験がある人にとって、かなり相性のいい資格だと思います。

建築士や消防設備士とも相性がいい可能性がある

行政書士は、建築系・建物系の知識がある人とも相性がいいと思います。

たとえば、建築士(建物の設計や工事監理をする資格者)なら、図面を見る力があります。建物の構造や用途、法規制に対する感覚もあります。

消防設備士(消防設備の工事や点検に関わる資格者)なら、建物、設備、消防法(火災予防や消防設備に関する法律)、店舗、点検、現場対応の感覚があります。

行政書士の仕事には、建物や店舗に関係する許認可(行政から許可や認可を受ける手続き)もあります。

特に風営許可では、店舗の図面、客室の面積、照明、構造、距離制限、用途地域などが関係してきます。

これは、ただ法律を知っているだけではなかなか難しい部分です。

図面に抵抗がない。
現場を見るのが苦ではない。
建物や設備の感覚がある。
役所とのやり取りに慣れている。

こういう人は、行政書士資格と組み合わせたときに、かなり強みを作りやすいと思います。

行政書士は、法律だけの資格というより、現場や業界知識と結びつきやすい資格です。

だから、建築士や消防設備士のように、すでに建物や現場に関わる知識を持っている人にとっては、かなり面白い選択肢になると思います。

英語が得意なら、在留資格やビザ関係もある

英語が得意な人にとっても、行政書士は相性がいい可能性があります。

行政書士の業務には、外国人の在留資格やビザ(入国・滞在に関する手続き)に関係する分野があります。

日本で働きたい外国人。
外国人を雇用したい会社。
日本で起業したい外国人。
家族を呼びたい人。
永住を考えている人。

こうした場面では、手続きだけでなく、相手の状況をきちんと聞き取り、必要な書類や条件を整理する力が必要になります。

もちろん、英語ができるだけで簡単に仕事になるわけではありません。

入管業務(外国人の在留資格などに関する業務)には専門知識が必要ですし、責任も重いです。

ただ、語学力や外国人対応の経験がある人にとっては、自分の強みを活かしやすい分野だと思います。

行政書士は、こういう「自分の得意」を業務に結びつけやすい資格です。

行政書士は、器用な人・得意分野がある人に向いている

行政書士は、士業の中では比較的目指しやすい資格と言われることがあります。

ただ、それは「実務が簡単」という意味ではありません。

むしろ、行政書士は実務の幅が広いからこそ、器用さや専門分野が求められる資格だと思います。

建設業許可なら、建設業界の知識。
風営許可なら、図面や店舗の構造を見る力。
在留資格なら、外国人対応や語学力。
飲食店営業許可なら、店舗運営や保健所対応への理解。
相続や遺言なら、人の話を丁寧に聞く力。

こう考えると、行政書士は「法律を勉強すれば何とかなる資格」というより、自分がすでに持っている経験や得意分野を、許認可ビジネスに変えていく資格だと思います。

ここが行政書士の難しさでもあり、面白さでもあります。

何も得意分野がない状態だと、開業後に迷いやすい

行政書士は、何も得意分野がない状態で目指すと、少し厳しいかもしれません。

もちろん、合格してから勉強して専門分野を作っていく人もいます。
最初から完璧な専門分野がないと絶対に無理、という話ではありません。

ただ、行政書士は業務範囲が広すぎます。

広すぎるからこそ、

「相続をやるのか」
「建設業許可をやるのか」
「入管業務をやるのか」
「風営許可をやるのか」
「会社設立をやるのか」

という方向性を決めないと、かなり迷いやすいと思います。

資格を取ったあとに、何を売るのか。
誰を助けるのか。
どの業界の困りごとを解決するのか。

ここが見えていないと、行政書士はしんどい資格になる可能性があります。

逆に、ここが見えている人にはかなり強いです。

建設業界にいた人が、建設業許可を扱う。
英語が得意な人が、在留資格やビザ関係を扱う。
建築や設備に強い人が、風営許可や店舗系の許認可に進む。
不動産業界にいた人が、宅建業免許や相続分野と組み合わせる。

こういう形なら、行政書士資格はかなり活きやすいと思います。

行政書士は「資格で一発逆転」より「経験を仕事に変える資格」

行政書士を、ただの一発逆転資格として見ると、少し危ないと思います。

たしかに、独立開業できる資格ではあります。

でも、独立できる資格と、独立して仕事が取れる資格は別です。

行政書士は、資格そのものだけで勝負するというより、自分の経験や得意分野と掛け合わせて勝負する資格だと思います。

だから私は、行政書士をこう考えています。

行政書士は、何もない人がゼロから一発逆転する資格というより、すでに持っている経験を仕事に変えやすくする資格。

この見方の方が、かなり現実に近いと思います。

建設業を知っている。
建築や設備に詳しい。
英語ができる。
外国人支援に関心がある。
飲食店や店舗運営に詳しい。
不動産業界にいた。
相続や家族関係の相談に関心がある。

こういう人にとって、行政書士はかなり面白い資格です。

行政書士に向いている人

行政書士に向いているのは、ただ法律が好きな人だけではないと思います。

むしろ、次のような人に向いています。

何かしらの業界経験がある人。
建設業、建築、不動産、設備、飲食、介護、運送、外国人支援など、関心のある分野がある人。
書類仕事が苦にならない人。
役所とのやり取りに抵抗がない人。
人の話を聞いて、状況を整理するのが得意な人。
自分の専門分野を作っていく覚悟がある人。

行政書士は、資格を取った瞬間に完成する仕事ではありません。

合格後に、どの分野で勝負するかを決めて、実務を学び続ける必要があります。

だからこそ、最初から得意分野や興味のある業界がある人は強いです。

逆に、行政書士を安易に選ばない方がいい人

反対に、行政書士を安易に選ばない方がいい人もいます。

「なんとなく独立できそう」
「法律系資格だからかっこいい」
「士業の中では簡単そう」
「資格を取れば食べていけそう」

この感覚だけで選ぶと、少し危ないと思います。

行政書士試験に合格すること自体も簡単ではありません。
そして、合格後の実務はさらに別物です。

実務では、お客様からお金をいただいて、責任を持って手続きを進めることになります。

試験勉強とは違います。

だからこそ、行政書士は「簡単そうだから選ぶ資格」ではなく、自分の得意分野と組み合わせて考える資格だと思います。

まとめ

行政書士は、素晴らしい資格だと思います。

ただし、誰にでも簡単におすすめできる資格ではありません。

行政書士は、士業の中では比較的目指しやすいと言われることもあります。
でも、実務はかなり専門的です。

建設業許可、風営許可、在留資格、飲食店営業許可、産廃業許可、相続、会社設立など、分野ごとに必要な知識や現場感が違います。

だから、行政書士は「資格を取ってから何をするか考える人」より、すでに得意分野がある人が、その分野を仕事に変えるために取る資格として考えた方が現実的です。

建設業界にいた人。
建築や設備に詳しい人。
英語ができる人。
不動産や店舗運営に関わってきた人。
人の相談を聞き、書類に落とし込むのが得意な人。

こういう人にとって、行政書士はかなり強い資格になる可能性があります。

行政書士は、資格だけで一発逆転する魔法ではありません。

でも、自分がすでに持っている経験や得意分野を、仕事に変えるための武器にはなります。

そう考えると、行政書士は「誰でも簡単に稼げる資格」ではなく、向いている人にはかなり面白い資格だと思います。